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プロテインの摂りすぎは腎臓に悪い?——健康な人と、そうでない人を分けて考える
「たんぱく質やプロテインの摂りすぎは腎臓に悪い」とよく言われます。でもそれは誰にでも当てはまるのでしょうか。健康な腎臓の人と、すでに腎臓病がある人を分けて、系統的レビューや日本の食事摂取基準・腎臓学会の基準をもとに、こわがらせず誠実に整理します。高齢者はむしろ“摂らなすぎ”にも注意。
🟢 この記事のやさしい結論(30秒でわかる)
- 「たんぱく質・プロテインの摂りすぎは腎臓に悪い」——これはすべての人に当てはまる話ではありません。
- 腎臓が健康な人では、たんぱく質を多めに摂っても腎機能が悪くなるという証拠は、今のところ乏しい(複数の研究をまとめた解析)。
- 一方、すでに腎臓病(CKD)がある人では、たんぱく質を控えることがすすめられます。ここを混ぜてはいけません。
- むしろ**高齢者は“摂らなすぎ”**が問題になりがち。筋肉が落ちる「サルコペニア・フレイル」を防ぐため、たんぱく質はしっかり必要です。
- 大事なのは、極端な大量摂取を習慣にしないことと、腎臓に不安がある人・持病のある人は自己判断せず医師に相談すること。
「プロテイン=腎臓に悪い」って、本当?
このセクションの要点:この話は「誰の腎臓か」で答えが変わります。まずそこを分けます。
「たんぱく質の摂りすぎは腎臓に負担」「プロテインは腎臓に悪い」——。
筋トレやダイエットでプロテインを飲む人が増え、この心配の声もよく聞くようになりました。
でも、この問いには大事な前提が抜けがちです。それは、「健康な腎臓の人」なのか、「すでに腎臓病がある人」なのか、ということ。
この2つを混ぜて語ると、誤解が生まれます。今日は、そこを分けて、こわがらせず誠実に整理します。
たんぱく質そのものの全体像はたんぱく質の完全ガイド——摂取量・吸収・質にまとめています。
① 健康な腎臓の人では、悪影響の証拠は乏しい
このセクションの要点:健康な成人では、高たんぱくで腎機能が悪化するという証拠は示されていません。
まず、腎臓が健康な人の場合から。
28件の研究(約1,400人)をまとめた解析(Devries ら, 2018, The Journal of Nutrition)では、高たんぱくの食事をしても、健康な成人の腎機能(GFR=腎臓が血液をこし取る能力)の変化に、悪い影響は見られなかったと報告されています。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)も、「高たんぱく=腎臓に負担」という一般的な心配は、健康で活動的な人については根拠がない、という立場を示しています。
さらに、筋トレをする健康な男性が体重1kgあたり3gを超えるかなり多めのたんぱく質を約1年間摂った研究(Antonio ら, 2016)でも、腎臓・肝臓・血中脂質に有害な影響は見られませんでした。
ただし、この研究は若く健康な男性・少人数が対象。「だから誰でも無制限に大丈夫」とまでは言えません。
それでも、「健康な人が普通〜やや多めにたんぱく質を摂って腎臓を壊す」という証拠は、現時点で乏しい——これは知っておいてよい事実です。
② 話が変わるのは「すでに腎臓病がある人」
このセクションの要点:たんぱく質を控えるべきなのは、CKD(すでに腎臓病がある人)です。
「プロテインは腎臓に悪い」という話が本当に当てはまるのは、**すでに腎臓の働きが落ちている人(慢性腎臓病=CKD)**です。
日本腎臓学会の食事療法の基準では、腎臓病が進んだ段階では、たんぱく質を体重に対して一定量まで控えることがすすめられています(ステージが進むほど制限は厳しくなります)。
弱った腎臓には、たんぱく質を代謝したあとの老廃物の処理が負担になり得るためです。
ポイントは、この制限は「腎臓病の人」向けであって、「健康な人」向けではないということ。
健康な人がこの情報だけを見て「たんぱく質はこわい」と極端に減らすと、次に述べる筋肉減少という別のリスクを招きます。
③ 「糸球体過剰濾過」=腎臓が傷む、ではない
このセクションの要点:高たんぱくで腎臓の“こし取る力”が一時的に上がるのは、正常な適応と考えられています。
「たんぱく質を摂ると、腎臓の“こし取る力(濾過)”が上がって、それが腎臓を傷める」——という説明を聞いたことがあるかもしれません。
これは「糸球体過剰濾過(しきゅうたいかじょうろか)」と呼ばれる現象です。
たしかに、高たんぱくの食事のあとに濾過量が一時的に上がることはあります。
でも、これを**「健康な腎臓の正常な適応反応」**とみなすのが、現在の主流の考え方です(Schrier ら, 2012 などのレビュー)。
もともとこの“過剰濾過が悪い”という説は、すでに腎臓が傷んでいる状況を前提にした議論から来ています。
とはいえ、「長期的にはどうか」を巡る研究の議論が完全に決着したわけではありません。だからこそ、健康な人でも「極端な大量摂取を、何年も習慣にする」ことは避ける——このくらいのバランスが誠実です。
そもそも、どれくらい摂ればいい?
このセクションの要点:日本の基準では、成人はおおむね1日50〜65g。極端な量を目指す必要はありません。
「摂りすぎ」を心配する前に、目安を知っておきましょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、たんぱく質の推奨量を次のようにしています。
| 対象 | 推奨量(1日) |
|---|---|
| 男性 18〜64歳 | 65 g |
| 男性 65歳以上 | 60 g |
| 女性 18歳以上 | 50 g |
(体を維持するのに必要な量は、体重1kgあたり約0.66gが基準)
運動をよくする人・アスリートでは、体重1kgあたり1.4〜2.0gが目安とされます(ISSN)。
多くの人にとって、食事にプロテインを1杯足すくらいは、この範囲におさまることがほとんどです。逆に、体重に対して極端に多い量を、目的もなく毎日続ける必要はありません。
④ 高齢者はむしろ“摂らなすぎ”に注意
このセクションの要点:年齢を重ねるほど、たんぱく質不足による筋肉減少のほうが心配です。
「摂りすぎ」の心配が強調されがちですが、**日本でより多くの人に当てはまる問題は、実は“摂らなすぎ”**です。
年齢を重ねると、たんぱく質が不足して**筋肉が落ちる「サルコペニア」や、心身が弱る「フレイル」**が起こりやすくなります。
そのため、
- 高齢者向けの国際的な提言(PROT-AGE, 2013/ESPEN, 2014)では、健康な高齢者で体重1kgあたり1.0〜1.2g(一般の目安より多め)が推奨されています
- 日本の食事摂取基準2025年版でも、高齢者はたんぱく質の目標の下限を引き上げ、フレイル予防の観点を強めています
つまり、「腎臓が健康な高齢者」がたんぱく質をこわがって減らすのは、むしろ逆効果になりかねません。
筋肉を守る栄養はサルコペニア(筋肉減少)とたんぱく質・ビタミンDで詳しく解説しています。
⑤ 腎臓以外で、気をつけたいこと
このセクションの要点:とくに動物性たんぱくに偏った大量摂取では、腎結石などに注意します。
腎機能そのものとは別に、いくつか知っておきたい点もあります。
- 腎結石:動物性たんぱく質の多い食事は、腎結石のリスク上昇と関連すると報告されています(Advances in Nutrition, 2022)。肉・魚に偏りすぎず、野菜や水分と一緒に
- 水分:たんぱく質を代謝した老廃物を排出するのに水分が使われます。多めに摂る人ほど、こまめな水分補給を意識したいところ
- 偏りをつくらない:プロテインで“たんぱく質だけ”を増やすより、食事全体(野菜・食物繊維・ミネラル)とのバランスを保つこと
たんぱく質は、あくまでバランスのなかの一つ。単品で大量に、が一番避けたい形です。
誇張しないための整理
このセクションの要点:よくある言われ方と、事実を並べてみます。
| よくある言われ方 | 実際のところ |
|---|---|
| 「プロテインは腎臓に悪い」 | 健康な腎臓の人では、悪影響の証拠は乏しい |
| 「たんぱく質制限は誰にでも必要」 | 制限がすすめられるのはすでに腎臓病がある人(CKD) |
| 「濾過が上がる=腎臓が傷む」 | 健康な人では正常な適応とみなすのが主流 |
| 「たんぱく質は控えめが安心」 | 高齢者はむしろ不足による筋肉減少に注意 |
🟢 かんたんまとめ
- 「プロテインは腎臓に悪い」は、誰にでも当てはまる話ではない。
- 腎臓が健康な人では、多めに摂っても腎機能が悪くなる証拠は乏しい(複数研究のまとめ)。
- たんぱく質を控えるべきなのは、すでに腎臓病(CKD)がある人。健康な人とは分けて考える。
- 高齢者はむしろ“摂らなすぎ”に注意。サルコペニア・フレイル予防にたんぱく質は大切。
- 成人の目安は1日50〜65g(+運動する人は多め)。極端な大量摂取を習慣にしないこと。
- 腎臓に不安がある人・持病のある人・薬を飲んでいる人は、自己判断せず医師に相談を。
参考文献
- Devries MC, et al. "Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets." J Nutr. 2018;148(11):1760-1775.
- Jäger R, et al. "ISSN position stand: protein and exercise." J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:20.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
- Bauer J, et al. "PROT-AGE: Evidence-Based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People." JAMDA. 2013;14(8):542-559.
本記事は教育目的の情報提供です。特定の食品・サプリメントの効果や安全性を断定するものではありません。腎臓の病気・糖尿病など持病のある方、たんぱく質制限を指導されている方、薬を服用中の方は、食事やサプリメントを変える前に必ず医師・管理栄養士にご相談ください。監修者は柔道整復師(国家資格)であり、医師ではありません。
監修:大黒 充晴(柔道整復師(国家資格) / 杏林アカデミー(杏林予防医学研究所)上級講座修了 / JALNIマスター講座修了者 / 臨床歴23年)/ 編集:不調を整える編集部
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