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美容・皮膚・髪

秋からすね・背中がかゆいのはなぜ?——乾燥かゆみの正体

10月ごろから、すねや背中、腰まわりが粉をふいたようにかゆくなる。その多くは「皮脂欠乏(乾皮症)」と呼ばれる乾燥によるかゆみです。冬に角層の脂(セラミド)が減る仕組み、熱いお湯と洗いすぎの影響、そして脂の材料になるリノール酸・たんぱく質の話を、研究の種類を分けて解説します。

不調を整える編集部(監修:大黒 充晴/柔道整復師・臨床23年)乾燥肌すね かゆい背中 かゆい皮脂欠乏症乾皮症セラミドリノール酸秋冬の乾燥分子栄養学

🟢 この記事のやさしい結論(30秒でわかる)

  • 秋から冬にすね・背中・腰がかゆくなるのは、多くが肌の表面の「脂」が足りなくなる乾燥です。皮脂欠乏症・乾皮症と呼ばれます。
  • 原因は3つの重なりです。①落としすぎ(熱いお湯・こすり洗い)②乾いた空気 ③脂を作る材料と年齢。
  • 冬は肌の表面の脂(セラミドなど)が春夏より大きく減る、という測定結果があります。
  • まずやることは「足す」より「落とさない」。ぬるめのお湯、こすらない、風呂上がりすぐ保湿。
  • 食事は、脂の材料(必須脂肪酸)と、肌を作る材料(たんぱく質)を切らさないこと。
  • 赤くただれる・ひび割れて血がにじむ・眠れないほどかゆい・全身がかゆい時は、皮膚科で相談してください。

なぜ秋になると、すねや背中がかゆくなるのですか?

このセクションの要点:肌のいちばん外側の「脂の膜」が薄くなり、水分が逃げやすくなるからです。

靴下を脱いだら、すねが白く粉をふいている。 夜、布団に入って温まると、背中や腰がむずむずしてくる。

秋から冬にかけて、こうした乾燥のかゆみが増えます。 医学的には皮脂欠乏症(乾皮症)、湿疹まで進むと皮脂欠乏性湿疹と呼ばれます。

米国の医学情報データベースStatPearlsでは、この状態は高齢の方に多く、すねが最もできやすい場所で、冬に悪化するのが特徴と整理されています。 背景にあるのは、加齢による角層の脂の減少と、寒さ・頻繁な入浴といった環境です(Srivastava ほか, StatPearls, PMID: 31747214)。

※角層(かくそう)=肌のいちばん外側の、薄い膜のような層のことです。

肌の「脂の膜」は何でできているのですか?

このセクションの要点:主役はセラミド。そのセラミドの一部には、食事由来の「リノール酸」が組み込まれています。

角層は、レンガ(角層の細胞)とセメント(細胞のすき間を埋める脂)にたとえられます。 このセメントの半分以上を占めるのがセラミドという脂です(Ohno, 薬学雑誌 2017, PMID: 28966260)。

セラミドの中でも、肌のバリアに欠かせない特別な型がアシルセラミドです。 この型には、リノール酸という脂肪酸が結合しています(同上/Wertz, Skin Pharmacol Physiol 2023, PMID: 38035548)。

リノール酸は、体の中で作れない必須脂肪酸です。 つまり、肌のセメントの一部は、食べた脂の材料でできている——ここが、乾燥肌を栄養から見るときの出発点です。

動物実験(子ブタ)では、リノール酸を含まない餌を続けると、アシルセラミドの中のリノール酸がオレイン酸に置き換わり、肌がうろこ状になって、皮膚から逃げる水分が対照群の約5倍に増えたと報告されています(Melton ほか, Biochim Biophys Acta 1987, PMID: 3651483)。

※これは極端な欠乏をつくった動物の実験です。ふだんの食事をしている人にそのまま当てはまるわけではありません。

冬は、肌の脂がどれくらい減るのですか?

このセクションの要点:冬は春夏に比べて、角層の脂がはっきり減ります。年齢とともにも減ります。

英国の研究では、女性の顔・手・脚の角層の脂を、季節と年齢で比べました。 その結果、冬は春夏よりも、主要な脂(特にセラミド)が大きく減っていました。年齢が上がるほど減ることも確認されています(Rogers ほか, Arch Dermatol Res 1996, PMID: 8950457)。

もう一つ、この研究には見落とされやすい点があります。 冬と加齢で、セラミドに結合している脂肪酸が「リノール酸型」から「オレイン酸型」へと割合を変えていたのです。

量が減るだけでなく、中身の組み合わせも冬型に変わる。 これが、毎年同じ時期に同じ場所がかゆくなる理由の一つと考えられます(研究の解釈であり、かゆみとの因果を直接示したものではありません)。

乾燥かゆみの3つの重なり——落とす・乾かす・作れない

このセクションの要点:「落としすぎ」「乾いた空気」「材料と年齢」。どれが大きいかで、やることが変わります。

重なり何が起きているか主にやること
①落とす熱いお湯・長湯・こすり洗いで、表面の脂が流れるぬるめ・短め・こすらない
②乾かす空気が乾き、角層の水分が逃げやすい風呂上がりすぐ保湿・室内の乾燥対策
③作れない脂や肌を作る材料が足りない/年齢で作る力が落ちる必須脂肪酸・たんぱく質を切らさない

①落とす——熱いお湯は、肌の水分を逃がしやすくする

スペインの研究(健康な50人)では、手をお湯に浸けたあと、皮膚から逃げる水分量(TEWL=経皮水分蒸散量)が約2倍に増えました。冷水でも増えましたが、お湯のほうが影響は大きかったと報告されています(Herrero-Fernandez ほか, J Clin Med 2022, PMID: 35053992)。

※これは手での測定です。全身の入浴で同じ数字になるとは限りませんが、「熱いお湯ほど脂と水分が逃げやすい」という方向は参考になります。

寒くなると、熱いお湯に長く浸かりたくなります。 そして、かゆいところをナイロンタオルでゴシゴシ。冬にかゆみが増える条件が、入浴の場面にそろっていることが多いのです。

②乾かす——乾いた空気は、肌の表面を弱くする

湿度と肌の関係をまとめた総説では、低い湿度と低い気温は、肌のバリア機能を全体として下げ、刺激に反応しやすくすると結論づけています(Engebretsen ほか, J Eur Acad Dermatol Venereol 2016, PMID: 26449379)。

ヒトの皮膚を培養したモデルでは、乾いた空気に1時間さらしただけで、角層のバリアに関わるたんぱく質(フィラグリンなど)の発現が下がりました(Izutsu-Matsumoto ほか, Int J Cosmet Sci 2025, PMID: 39935117)。

※こちらは培養モデル(試験管レベル)の結果です。ヒトの体でそのまま同じことが起きると確かめられたものではありません。 ※なお、別の総説では「湿度と肌の関係は研究によって結果が分かれる」とも指摘されています(Goad ほか, 同誌 2016, PMID: 27306376)。

③作れない——材料と年齢

加齢とともに角層の水分は減り、表面のpH(酸性度)は上がり、バリアは崩れやすくなります。 これが高齢の方の乾燥・かゆみ・湿疹の土台になる、と総説で整理されています(Wang ほか, Aging 2020, PMID: 32217811)。

年齢は変えられません。だからこそ、①と②で「落とさない・逃がさない」を先に固め、③の材料は切らさない——この順番が現実的です。

今日からできること——「足す」より「落とさない」

このセクションの要点:洗い方を変えるのが、いちばんお金がかからず、すぐできる一手です。

  • お湯はぬるめに、長湯は控えめに。熱いと感じる温度は、脂を流しやすい方向です。
  • すね・背中はこすらない。泡をのせて手でなでる程度で十分なことが多い部位です。
  • 石けん・ボディソープは、毎日全身に使わなくてよいことがあります。汗や汚れが多い場所を中心に。
  • 風呂上がりは、肌が乾ききる前に保湿。すね・背中・腰を忘れずに。
  • 暖房の風が直接当たる場所を避ける。部屋の乾燥が強い時は、加湿や洗濯物の室内干しなども選択肢です。
  • かゆいところをかかない工夫。爪を短く、寝る前に保湿、締めつけの強い衣類を避ける。

保湿剤の種類や使い分けは、皮膚科や薬剤師に相談すると確実です。この記事では、栄養の側を深掘りします。

食事で整えるなら——脂の材料と、肌を作る材料

このセクションの要点:リノール酸は「足りない人は少ない」栄養素。むしろ、極端な油抜きとたんぱく質不足に気をつけます。

正直に書いておきます。 リノール酸は植物油やごま・ナッツに多く、ふだんの日本の食事で足りなくなる人は多くありません。むしろ、オメガ6(リノール酸の仲間)の摂りすぎが話題になる栄養素です。

だから、乾燥肌のために「油をたくさん摂る」必要はありません。 気をつけたいのは、ダイエットで油をほぼ抜いている、食事量そのものが減っている(高齢の方に多い)——このような「材料が入ってこない」状態です。

肌を作る側の材料として、次のものも意識します。

材料肌での役割多い食べ物
たんぱく質角層の細胞やバリアのたんぱく質の材料肉・魚・卵・大豆製品
ナイアシン(ビタミンB3)セラミドを作る酵素に関わる(下の※)かつお・まぐろ・鶏むね肉・きのこ
ビタミンA皮膚や粘膜の細胞の入れ替わりを支えるうなぎ・レバー(※摂りすぎ注意)、かぼちゃ・にんじん(β-カロテン)
亜鉛皮膚の細胞が作られる時に使われる牡蠣・赤身肉・かぼちゃの種
必須脂肪酸セラミドの一部の材料(リノール酸)ごま・くるみ・植物油(少量でよい)

※ナイアシンの一種(ニコチンアミド)は、培養したヒトの皮膚細胞でセラミドの合成を高め、肌に塗る試験では乾燥肌の水分蒸散を下げたと報告されています(Tanno ほか, Br J Dermatol 2000, PMID: 10971324)。ただしこれは細胞実験と「塗る」試験です。食べたり飲んだりして同じ効果が出るとは確かめられていません。

簡単レシピ:鶏むねとかぼちゃ・しめじのごま炒め

このセクションの要点:たんぱく質・ナイアシン・β-カロテン・少量のごま油を、1皿でそろえます。

材料(2人分)

  • 鶏むね肉 1枚(そぎ切り)
  • かぼちゃ 1/8個(薄切り)
  • しめじ 1パック
  • ごま油 小さじ2、すりごま 大さじ1
  • しょうゆ・みりん 各大さじ1

作り方

  1. かぼちゃは薄く切り、ラップをして電子レンジで2分ほど加熱する。
  2. フライパンにごま油を熱し、鶏むね肉を焼く。色が変わったらしめじを加える。
  3. かぼちゃを加え、しょうゆ・みりんを回しかけて全体にからめる。
  4. 火を止めて、すりごまをふる。

β-カロテンは油と一緒のほうが吸収されやすい栄養素です。ごま油・すりごまは、その意味でも役に立ちます。

こんなかゆみは、乾燥だけではないかもしれません

このセクションの要点:赤い湿疹・ひび割れ・全身のかゆみは、早めに皮膚科へ。

  • 赤くただれる、ジュクジュクする、ひび割れて血がにじむ——皮脂欠乏性湿疹に進んでいる可能性があります。
  • 見た目は乾燥していないのに、全身がかゆい——肝臓・腎臓・甲状腺などの病気や、薬の影響でかゆみが出ることがあります。StatPearlsでも、乾燥性の湿疹が甲状腺機能低下症・低栄養・一部の薬(利尿薬など)と関連しうると記載されています(PMID: 31747214)。
  • 眠れないほどかゆい、保湿と洗い方を見直してもしばらく変わらない——自己流を続けず、相談してください。

もともとアトピー性皮膚炎がある方は、アトピー・乾燥肌とバリア機能の生化学を、湿疹がないのに季節を問わずかゆい方は、慢性的な皮膚のかゆみと炎症・腸内環境の関係をあわせてご覧ください。かかとのガサガサが気になる方はかかとのひび割れの記事へ。

よくある質問

Q. 保湿クリームを塗っているのに、毎年かゆくなります。 A. 塗る前に「落としすぎ」が続いていないかを見直してください。熱いお湯・長湯・こすり洗いが続くと、塗る量が追いつかないことがあります。

Q. 油を多めに摂れば、乾燥肌はよくなりますか? A. 多めに摂る必要はありません。リノール酸はふだんの食事で足りている人が多い栄養素です。極端な油抜きをしていないか、食事量が減っていないかを確認するほうが大切です。

Q. 乾燥肌に、サプリは要りますか? A. この記事のテーマに直接合うサプリは、ここでは紹介していません。まずは洗い方と保湿、そして食事の材料を整えることが先です。

🟢 かんたんまとめ

このセクションの要点:秋冬のかゆみは「落とさない」が一番。食事は材料を切らさない。

  • 秋冬にすね・背中がかゆいのは、肌の表面の脂が減る乾燥が多いです。
  • 冬は肌の脂が春夏より減り、年齢とともにも減ります。
  • いちばん効率がよいのは、ぬるめのお湯・こすらない・風呂上がりすぐ保湿。
  • 脂の材料(リノール酸)は足りている人が多い。極端な油抜きとたんぱく質不足に注意。
  • 赤い湿疹・ひび割れ・全身のかゆみ・眠れないかゆみは、皮膚科へ。

この記事で参照した資料

  • Srivastava D, Sathe NC, Persaud Y. Asteatotic Eczema. StatPearls, 2026. PMID: 31747214
  • Ohno Y. 薬学雑誌 2017;137(10):1201-1208. PMID: 28966260
  • Wertz PW. Skin Pharmacol Physiol 2023;36(5):225-234. PMID: 38035548
  • Melton JL, et al. Biochim Biophys Acta 1987;921(2):191-7. PMID: 3651483(動物実験)
  • Rogers J, et al. Arch Dermatol Res 1996;288(12):765-70. PMID: 8950457
  • Herrero-Fernandez M, et al. J Clin Med 2022;11(2):298. PMID: 35053992
  • Engebretsen KA, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30(2):223-49. PMID: 26449379
  • Goad N, Gawkrodger DJ. J Eur Acad Dermatol Venereol 2016;30(8):1285-94. PMID: 27306376
  • Izutsu-Matsumoto Y, et al. Int J Cosmet Sci 2025;47(3):523-534. PMID: 39935117(培養モデル)
  • Wang Z, et al. Aging (Albany NY) 2020;12(6):5551-5565. PMID: 32217811
  • Tanno O, et al. Br J Dermatol 2000;143(3):524-31. PMID: 10971324(細胞実験・塗布試験)

※本記事は健康情報の提供(教育目的)であり、診断・治療を目的としたものではありません。感じ方には個人差があります。持病のある方・服薬中の方・妊娠授乳中の方は、食事やサプリメントを大きく変える前に医師・薬剤師にご相談ください。

監修:大黒 充晴(柔道整復師(国家資格)・臨床23年/大黒整骨院 院長)

監修:大黒 充晴(柔道整復師(国家資格) / 杏林予防医学研究所「細胞環境デザイン学」上級講座修了 / JALNIマスター講座修了者 / 臨床歴23年) / 編集:不調を整える編集部

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