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腎臓の数値を指摘されたら——「ミネラルを足す」前に知っておきたいこと
クレアチニン・eGFR・蛋白尿を指摘された方へ。腎機能が低下すると、マグネシウムやカリウムは「足りない」より「排泄が追いつかない」ことが問題になります。天然塩・にがり・サプリでミネラルを足す前に知っておきたいリスクと、主治医の指示の範囲でできる食事の考え方を、誇張せず正直に整理します。
🟢 この記事のやさしい結論(30秒でわかる)
- 腎臓の数値(クレアチニン・eGFR・蛋白尿)の管理は、医療の領域です。 この記事は受診や治療の代わりにはなりません。まず主治医の指示を最優先にしてください。
- 腎機能が低下したときにミネラルで問題になるのは、多くの場合「足りないこと」ではなく「排泄が追いつかないこと」です。マグネシウム・カリウム・リンは、腎臓から捨てられなくなると体に溜まります。
- そのため、「腎臓のためにマグネシウムを足す」「天然塩やにがりに替える」といった自己判断は、腎機能によっては危険になりえます。 天然塩・にがりはカリウムやマグネシウムを含み、制限を受けている方には合わないことがあります。
- 「経皮(塗る・入浴)なら腎臓を通らない」も正しくありません。 体に吸収された分は、結局は腎臓から排泄されます。
- ⚠️ 吐き気・強い脱力・動悸や脈の乱れ・息苦しさが出たときは、高マグネシウム血症や高カリウム血症の可能性があります。様子を見ずに受診してください。
まず大前提:腎臓の数値は、医療で診るもの
このセクションの要点:クレアチニン・eGFR・蛋白尿を指摘されたら、やることは定期的な受診と検査です。栄養の話は、その指示の「範囲内」で考えるものです。
健診で「クレアチニンが少し高い」「eGFRが下がっている」「蛋白尿が出ている」と言われた——このとき最優先なのは、医療機関で継続的に診てもらうことです。
慢性腎臓病(CKD)は、日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」で、推計約1,480万人(20歳以上の約7〜8人に1人)とされています。多くは自覚症状がないまま進むため、自覚ではなく検査値で追いかける必要があります。だからこそ、数値の解釈と食事療法の方針は、主治医・管理栄養士が個別に決めるべき領域です。
この記事は、その方針を置き換えるものではありません。「よかれと思ってやったことが、腎臓では逆に働くことがある」——その部分に絞って、正直にお伝えします。
持ち帰りポイント:腎臓の数値は医療で管理。栄養は「指示の範囲内で何ができるか」の話。
腎臓は「ためない」ための臓器——だから足し算に注意が要る
このセクションの要点:腎臓はミネラルを体から捨てる役割を担います。その力が落ちているとき、外から足す行為は溜める方向に働くことがあります。
腎臓は、血液をろ過して必要なものを再吸収し、余分なものを尿として捨てる臓器です。ナトリウム・カリウム・マグネシウム・リンといったミネラルの「体内の量」は、主に腎臓が捨てる量を調節することで保たれています。
ここが、健康な人と腎機能が低下した人で決定的に違うところです。
| 腎機能が保たれている場合 | 腎機能が低下している場合 | |
|---|---|---|
| 余分なマグネシウム | 尿として捨てられる | 捨てにくくなり体内に溜まりやすい |
| 余分なカリウム | 尿として捨てられる | 捨てにくくなり血中濃度が上がりやすい |
| 余分なリン | 尿として捨てられる | 溜まりやすく骨や血管に影響しうる |
つまり腎機能が落ちている状態では、ミネラルの課題は「足りない」から「捨てられない」へ変わります。この前提を飛ばして「体にいいミネラルだから足そう」と考えると、方向を間違えることがあります。
「腎臓のためにマグネシウムを」に注意が必要な理由
このセクションの要点:腎機能が低下しているとマグネシウムが排泄されにくくなり、高マグネシウム血症を招くことがあります。サプリで足すかどうかは主治医の判断です。
マグネシウムは、体内の多くの酵素反応に関わる大切なミネラルです。健康な人であれば、余った分は腎臓から尿へ捨てられるため、食事の範囲で神経質になる必要はあまりありません。
一方、腎機能が低下している場合、この「捨てる」経路が細くなります。 サプリメントや、マグネシウムを含む一部の市販薬(酸化マグネシウムの便秘薬など)で摂取量が増えると、血中のマグネシウム濃度が上がり、高マグネシウム血症を起こすことがあります。
高マグネシウム血症では、吐き気・強い脱力感・血圧低下・脈が遅くなるなどが起こり、重い場合には呼吸や心臓の働きに影響することがあります。軽い段階では自覚しにくいのが、注意すべき点です。
このため、腎機能に指摘を受けている方がマグネシウムのサプリメントを摂るかどうか・どの程度かは、自己判断ではなく主治医の判断になります。この記事では量も可否も指定しません。
⚠️ 便秘対策として酸化マグネシウムの市販薬を常用している方も、腎機能の指摘を受けたら必ず医師・薬剤師に申し出てください。「薬ではなく整腸のため」という感覚で続けている方が少なくありません。
「精製塩をやめて天然塩に」が、CKDでは通らないことがある
このセクションの要点:天然塩・にがりはカリウムやマグネシウムを含みます。腎機能によってはカリウム制限を受けるため、「塩の質を変える」提案が合わない場合があります。
「精製塩をやめて天然塩に替えれば、ミネラルも一緒に摂れる」——健康な方向けにはよく語られる考え方です。しかし腎機能が低下している方には、そのまま当てはめられません。
天然塩やにがりには、マグネシウムに加えてカリウムが含まれます。腎機能が低下すると、このカリウムも捨てにくくなり、血中濃度が上がることがあります。高カリウム血症は、脱力・しびれ・脈の乱れを起こし、重い場合は心臓の動きに直接影響する状態です。
そのため腎臓の治療では、進行度に応じてカリウム制限が指示されることがあります。この指示を受けている方が「体にいいから」と天然塩やにがりに切り替えると、制限とは逆方向に働きます。
減塩についても同じです。CKDの食事療法では減塩が基本的な指導として位置づけられています。「塩の量ではなく質を変えればいい」という話に置き換えず、主治医・管理栄養士から指示された塩分量を守ることが土台になります。
持ち帰りポイント:塩の種類を変える前に、まず指示された塩分量。カリウム制限の有無は必ず確認を。
「経皮なら腎臓を通らない」は、正しくありません
このセクションの要点:塗る・入浴という経路でも、体に吸収されたミネラルは最終的に腎臓から排泄されます。「腎臓に負担をかけずに補給できる」という説明は成り立ちません。
マグネシウムのジェルや入浴剤について、「皮膚から入るので、腸や腎臓を通らず安全に補給できる」という説明を見かけることがあります。これは成り立たない説明です。
理由はシンプルで、皮膚から吸収されて血液に入った以上、その行き先は全身だからです。血中に入ったマグネシウムを体外へ出す経路は、結局のところ腎臓です。経路の入口が口か皮膚かによって、出口が変わるわけではありません。
加えて、経皮からのマグネシウム吸収そのものについても、人での研究は規模が小さく、質の高い証拠が十分にそろっているとは言えません。「腎臓をバイパスできる安全な補給法」という前提で使うのは避けてください。
入浴そのもののリラックス効果を否定するものではありません。ただし、腎臓・心臓に指摘のある方は、入浴剤の使用や入浴の温度・時間についても主治医に確認しておくと安心です。
それでも、食事でできることはある——ただし指示の範囲内で
このセクションの要点:足す方向ではなく「減らす・整える」方向に、できることがあります。たんぱく質やカリウムの量は必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。
ここまで「足すことへの注意」を続けてきましたが、食事でできることが何もない、という話ではありません。方向が違うだけです。
- 加工食品・超加工食品を減らす:加工食品には保存性や食感のためにリン酸塩が使われることがあります。食品添加物として加えられた無機リンは吸収されやすく、腎機能が低下した方では管理が必要になる要素です。同時に塩分も下がるため、指示された減塩とも方向が一致します(加工食品と体への影響はこちらの記事でも扱っています)。
- 血圧・血糖の管理を続ける:高血圧と糖尿病は、腎機能の低下に関わる代表的な要因です。処方されている薬をきちんと続けることが、腎臓を守る土台になります。
- 市販薬・サプリを申告する:痛み止め(NSAIDs)、便秘薬、健康食品など、腎臓に影響しうるものがあります。飲んでいるものを一覧にして主治医に見せるのが、いちばん確実です。
- たんぱく質・カリウム・塩分の量は指示に従う:これらは進行度によって指示が大きく変わります。ネットの一般論ではなく、自分の検査値をもとにした指示が正解です。健康な方とCKDの方でたんぱく質の適量がどう分かれるかはプロテインの摂りすぎは腎臓に悪い?で整理しています。
栄養の役割は、治療の代わりをすることではなく、主治医の方針を邪魔しない食生活を組み立てることです。
こんなときは、様子を見ずに受診を
このセクションの要点:ミネラルが体に溜まったサインは、自覚しにくいまま進むことがあります。次の症状は緊急性があります。
| サイン | 考えられること |
|---|---|
| 吐き気・強い脱力・血圧低下・脈が遅い | 高マグネシウム血症の可能性 |
| 手足のしびれ・力が入らない・動悸や脈の乱れ | 高カリウム血症の可能性 |
| 急なむくみの悪化・尿量の減少・息苦しさ | 腎機能・心機能の悪化の可能性 |
いずれも「疲れかな」で見過ごされやすい症状です。腎機能の指摘を受けている方は、迷ったら受診を優先してください。
まとめ
このセクションの要点:腎臓では「足す」より「捨てられるか」が問題になります。ミネラルの自己判断を止め、主治医の指示の範囲内で減らす・整える方向に力を使いましょう。
| ポイント | 要点 |
|---|---|
| 前提 | 腎臓の数値の管理は医療の領域。栄養は指示の範囲内 |
| マグネシウム | 腎機能低下時は排泄されにくい。サプリの可否は主治医が判断 |
| 天然塩・にがり | カリウムを含む。カリウム制限中は合わないことがある |
| 減塩 | 「質を変える」ではなく、指示された塩分量を守るのが土台 |
| 経皮 | 吸収されれば腎臓から排泄される。バイパスにはならない |
| できること | 加工食品を減らす・血圧血糖の管理・服用中のものを申告 |
腎臓の数値を指摘されると、「何かを足して良くしたい」と考えたくなります。けれど腎臓については、足すことより、溜めないこと・指示を守ることのほうが確実な守り方です。
不安なときほど、情報を増やすより、次の受診で主治医に聞く——それがいちばん近道になります。
本記事は教育目的の情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・栄養素・サプリメントが慢性腎臓病を予防・改善・治療することを示すものではありません。慢性腎臓病・腎機能低下を指摘された方の食事療法(塩分・たんぱく質・カリウム・リンの量)およびサプリメントの可否は、必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。マグネシウムを含む市販薬・サプリメントは、腎機能が低下している場合に高マグネシウム血症を起こすことがあります。自己判断での開始・継続は避けてください。
監修:大黒 充晴(柔道整復師(国家資格) / 杏林予防医学研究所「細胞環境デザイン学」上級講座修了 / JALNIマスター講座修了者 / 臨床歴23年) / 編集:不調を整える編集部